非常用発電機は、その名の通り非常時において自動的に起動し電力を供給するための発電機です。建物の設備として扱われますが、非常時に適切に作動させることが必要であり、そのために非常用発電機の試験(点検)は半年に一回と年に1回の総合試験で始動することを確認しなければなりません。年に一度の負荷試験点検をしていない施設で災害が起きたとき、負傷者等が出た場合に最大1億円の罰金、建物名等の公表、また事故時の過失責任を問われる事があります。
もくじ
非常用発電機の試験に必要な費用相場
非常用発電機の試験は、半年に1回の試験(点検)と年に1回の総合試験があり、発電機が始動することを確認するものです。これは消防法によって定められているもので、1年に1度の総合試験は義務付けられているものです。日頃から点検を行っていても非常時に確実に作動させるためには、年1回の総合試験は重要なものといえます。費用は発電機の大きさ等で変わりますが15万円から50万円ほどで、内容としては負荷試験という形になります。非常用発電機はディーゼルエンジンなどの発動機を動かして、得られた回転エネルギーを使って発電機を動かし電気を供給するものですが、このさいにエンジンの始動だけを確認するだけでは不十分です。エンジンだけを作動させるものは無負荷運転点検と呼ばれるもので、エンジンが始動するか確認するだけのものです。このため点検費用は高くありませんが、この無負荷だけでは実際の発電を行うさいの負荷に耐えられないこともあります。このようなことを防ぐために負荷をかけて試験を行う必要があるものです。
負荷試験を行うことの意味
非常用発電機の負荷試験が行われるようになったのは東日本大震災以降のことです。東日本大震災では少なからぬ非常用発電機が整備不良で稼働しないトラブルがあり、このことから法律により始動点検だけでなく総合試験と同時に30%以上の負荷試験を行うことが義務付けられています。
負荷試験を行う理由としては、単なる始動点検だけでは不十分であるためです。月次点検等で始動試験が行われますが、無負荷の状態では非常用発電機に使われているディーゼルエンジン内にカーボンが堆積していきます。堆積されたカーボンは黒煙の原因になるだけでなく非常時に発電機が正常に作動させることができません。発電機は建物の非常電源として使用されるほかにも消火用の送水ポンプも作動させることができなくなり、建物に備えられている消火機能を喪失させることになり、被害を拡大させるリスクが高まり、またカーボンの堆積などが原因によって発電機そのものから火災を起こすリスクもあります。負荷試験ではカーボンを燃焼排出させ、また実際に負荷を掛けることにより非常時に正常に作動させるようにする大切な意味があります。
負荷試験の方法と仕組み
負荷試験は専用のユニットを用いて行います。負荷試験の流れとしては、非常用発電機から供給され施設の配電盤につながっている部分を遮断し、発電機からの配線はユニットに接続します。この状態で発電機を始動させて実際に電気を発電させるものです。発電された電気はユニットに供給されることになりますが、ユニットが電気を消費することで発電機に負荷をかけていきます。
負荷試験はユニットを使って負荷を掛けつつ発電機に異常がないか確認するもので、エンジンが正常に作動しているか確認を行っていくものです。特にディーゼルエンジンはその性質上カーボンが堆積しやすいものですから、負荷を掛けることにより燃焼させ排出させることができます。法律では負荷は30%以上であるため30%以上に達して正常に作動していれば試験はクリアとなります。
負荷試験で必要な費用の相場
負荷試験そのものはそれほど、難しいものではなく負荷を掛けるための試験用ユニットと発電機に関する知識があれば可能です。このため点検業者でも対応していますが、一方で試験は形式的なものになりがちな業者もいますので、しっかりアドバイスをしてくれる業者に依頼しましょう。
費用に関しては地域によって相場が変わってきますが、おおむね非常用発電機の発電量で決定します。20kWA以下では15万円から20万円ですが、230kWA以上では30万円から50万円です。安いところでは30%以上を確認するだけのケースが多いですが、もし100%負荷試験を行ったは費用が少し高めになります。この理由は点検ユニットが高額になるためで特に大容量なものでは、高額になりがちです。しかし義務化される前までは負荷試験は大容量のものでは100万円以上の費用が掛かっていましたが、義務化されたことにより現在では3分の1程度に安くなっています。また業者によっては12回分割の月払いに対応しているところもあり、以前と比べて非常用発電機の点検がしやすくなっています。
■負荷試験測定データ実例■
※株式会社東京エナジーカンパニー提供
まとめ
非常用発電機は非常時に正常に作動しなければ意味を持ちません。実際に東日本大震災では20%から30%の非常用発電機が不具合を起こして稼働しないトラブルが起こっています。非常用発電機が作動する状況においてはすぐに業者が修理に来てくれるとは考えられず被害を拡大させる原因になるかもしれません。このようなトラブルを避けるためにも日頃からの点検が重要であり、また実際に発電を行う負荷試験が必要です。