【2025年最新】非常用発電機の消防法を条文から解説|設置基準・点検義務・届出まで完全ガイド

ビルの防火管理者や設備担当者にとって、非常用発電機の管理は重要な責務の一つです。
しかし、関連する消防法は条文が複雑で、頻繁な法改正もあり、正確な情報の把握は容易ではありません。
「目前の消防査察で指摘されないか」「業者から提案された点検内容やコストは本当に適正なのか」といった不安を感じることもあるでしょう。

このページでは、非常用発電機に適用される消防法の規制について、法的根拠となる条文にも触れながら、専門外の方でも理解できるよう分かりやすく解説します。

消防法における非常用発電機の位置づけ【基本の確認】

非常用発電機がなぜ消防法で厳しく規制されているのか、まずはその基本的な役割と法的な位置づけから確認しましょう。

消防法第17条が定める「非常電源」の設置義務とは

火災などの災害発生時に、停電によってスプリンクラーや火災報知機が作動しない事態は絶対に避けなければなりません。
そのため消防法では、消防用設備等が常にその機能を有効に発揮できるよう、設置と維持を義務付けています。

この根拠となるのが消防法第17条です。
この条文に基づき、常用電源が停止した場合でも消防用設備へ電力を供給し続ける「非常電源」の設置が求められています [1]。
非常用発電機は、この非常電源の最も代表的な設備の一つです。

設置義務の対象となる建物の種類と規模(特定防火対象物)

非常用発電機の設置義務は、全ての建物に課せられるわけではありません。
特に、不特定多数の人が利用し、火災発生時の被害が大きくなる危険性の高い「特定防火対象物」のうち、一定規模以上のものが対象となります。
具体的には、延べ面積が原則として 1,000 平方メートル以上の特定防火対象物には、非常電源の設置義務が生じます。

対象となる特定防火対象物(例) 具体例
興行場、集会場など 劇場、映画館、公会堂、ナイトクラブ
遊興施設、店舗など キャバレー、カフェー、カラオケボックス、百貨店、マーケット
宿泊施設、医療・福祉施設など ホテル、旅館、病院、診療所、老人ホーム、幼稚園
交通機関、複合用途施設など 駅、空港、地下街、複数の用途が入るビル

自身の管理する建物がこれらに該当するかどうかを正確に把握することが、法令遵守の第一歩となります。

【条文・基準で確認】消防法が定める非常用発電機の技術的設置基準

非常用発電機を設置する際は、消防法および関連法令で定められた詳細な技術基準を満たす必要があります。
ここでは、性能と設置場所に関する主要な基準を解説します。

性能に関する基準:起動時間40秒、連続運転時間、燃料容量

非常用発電機は、いざという時に確実に性能を発揮できなければなりません。
そのため、消防法施行規則などで具体的な数値基準が定められています。

項目 技術基準 法的根拠(例)
起動時間 常用電源が停止してから 40 秒以内に電圧を確立し、電力を供給できること 消防法施行規則第12条
連続運転能力 定格負荷の状態で 60 分以上、連続して運転できる性能があること 消防法施行規則第12条
燃料容量 接続されている消防用設備等を有効に 2 時間以上作動させられる量を確保すること 消防法施行規則第12条

近年では、大規模災害時における事業継続計画(BCP)の観点から、72時間以上の連続運転能力の確保が推奨されるケースも増えています。

設置場所に関する基準:耐火構造、換気設備、離隔距離

発電機本体の性能だけでなく、安全に稼働させるための設置環境も厳しく規定されています。
火災の延焼防止や、排気ガスによる事故を防ぐための重要な基準です。

項目 設置基準の概要 法的根拠(例)
設置場所の構造 発電機室は耐火構造の壁・床・天井で区画すること 建築基準法施行令第129条の2の5
換気・排気設備 給気口および排気口を設け、排気ガスは屋外の安全な場所へ排出すること 建築基準法施行令第129条の2の5
機器の離隔距離 発電機の周囲には、点検・整備に必要な 0.6 m 以上の空間を確保すること 各市町村火災予防条例
燃料タンクとの距離 発電機本体と燃料タンクは原則 2 m 以上離すか、防火上有効な遮へい物を設置すること 各市町村火災予防条例 [2]

これらの基準は、消防法だけでなく建築基準法や各自治体の火災予防条例にもまたがっています。
そのため、計画段階から専門家と連携して進めることが不可欠です。

担当者が必ず押さえるべき点検義務の全て

非常用発電機は、設置して終わりではありません。
その性能を維持するため、法律で定められた定期的な点検と報告が義務付けられています。

定期点検の種類と周期(機器点検6ヶ月・総合点検1年)

点検は大きく分けて「機器点検」と「総合点検」の2種類があり、それぞれ周期と内容が異なります。

点検種別 周期 主な点検内容の例
機器点検 6ヶ月に 1回 – 外観の損傷、変形、腐食の確認
– 燃料、潤滑油、冷却水の量の確認
– 蓄電池(バッテリー)の状態確認
– 無負荷での試運転
総合点検 1年に 1回 – 機器点検の全項目
– 実際に消防用設備等と連動させた総合的な機能確認
負荷試験または内部観察の実施

これらの点検は、消防設備士や専門の資格を持つ技術者が行う必要があります。

【平成30年改正】負荷試験は毎年必要?周期延長(6年)の条件と代替手段

総合点検の中でも特に重要なのが、発電機に実際に負荷をかけて性能を確認する「負荷試験」です。
従来は毎年実施が原則でしたが、平成30年の法改正により、一定の条件を満たすことで周期を最長6年に1回に延長できるようになりました [3]。

この周期延長を適用するには、「予防的な保全策」を毎年実施することが条件となります。

周期延長の条件
予防的な保全策の実施(毎年)
– 運転性能に影響のある部品(潤滑油、冷却水、燃料フィルターなど)をメーカー推奨の周期内に交換する
– 1年以内ごとに、負荷試験または内部観察を実施する

負荷試験の代替手段として「内部観察」という方法も認められています。
これは、シリンダー内部などを内視鏡で確認する分解点検のことです。
どちらの方法を選択するかは、コストや設備の状況を考慮して専門業者と相談するのがよいでしょう。

点検結果の報告義務|消防署への届出と記録保管期間

点検を実施した後は、「消防用設備等点検結果報告書」を作成し、管轄の消防署長へ報告する義務があります。
報告の周期は、建物の用途によって異なります。

  • 特定防火対象物:1年に1回
  • 非特定防火対象物:3年に1回

また、作成した点検結果の記録は、最低3年間保管しなければなりません。
これらの書類は、消防査察の際に提示を求められる重要なものです。

消防法だけじゃない!電気事業法・建築基準法との関係性と注意点

非常用発電機の管理には、消防法以外にも電気事業法と建築基準法が深く関わってきます。
これらの法律の関係性を理解することで、より網羅的な安全管理が可能になります。

法律 主な目的と規制内容
消防法 火災時の機能維持
消防用設備への電源供給を目的とし、起動性能、連続運転、点検・報告を規定する。
電気事業法 電気の安全な利用
発電設備を一つの電気工作物とみなし、感電や漏電事故を防ぐための保安管理を規定する。
建築基準法 建物の安全性確保
発電機室の耐火構造や換気設備など、建物の一部としての安全性を規定する。

電気事業法:自家用電気工作物としての保安義務と安全管理審査

出力が 50 kW 以上の非常用発電機は、電気事業法における「自家用電気工作物」に該当します。
この場合、設備の保安監督を行う「電気主任技術者」を選任する義務が生じます。

また、令和5年からは法改正により、安全管理審査の対象が拡大されるなど、国全体の安全管理基準は年々厳格化されています [4]。
自社の設備が自家用電気工作物にあたるか不明な場合は、必ず確認が必要です。

建築基準法:設置場所の構造要件と建築確認申請の要否

前述の通り、発電機室の耐火構造や換気設備などは、建築基準法によって定められています。
特に注意が必要なのは、設備の更新や移設、燃料タンクの増設などを行う場合です。

これらの工事は建物の構造変更とみなされ、事前に「建築確認申請」が必要になるケースがあります [5]。
届出を怠ると法令違反となるため、大規模な改修を計画する際は、設計段階で必ず行政や専門家への確認を行いましょう。

まとめ:法令遵守で利用者の安全と事業継続(BCP)を守る

非常用発電機に関する消防法や関連法規の規定は、多岐にわたり複雑です。
しかし、これらの基準はすべて、万が一の災害時に人命を守り、被害を最小限に食い止めるために設けられています。

定期的な点検や適切なメンテナンスを計画的に実施することは、単なる法律上の義務を果たすだけではありません。
それは、建物利用者の安全を確保し、企業の事業継続(BCP)を支える重要な基盤となります。
この記事で解説した内容を参考に、自社の管理体制を今一度見直し、より安全な施設運営にお役立てください。

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