非常用発電機メンテナンス完全ガイド【担当者必見】法的義務・費用・業者選びを解説

万が一の停電時に、事業活動や人々の安全を守る最後の砦となる非常用発電機。
その重要性は誰もが理解している一方で、メンテナンスとなると話は別かもしれません。
「法律で義務付けられているのは知っているが、具体的に何をすればいいのか」
「点検の種類が多くて、費用もどれくらいかかるのか見当がつかない」
「信頼できる業者をどうやって選べばいいのだろうか」
設備管理や防火管理を担当する方であれば、一度はこうした疑問や不安を感じたことがあるのではないでしょうか。
この記事では、非常用発電機のメンテナンスに関する法的な義務から、具体的な点検内容、費用相場、そして失敗しない業者の選び方まで、担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。

なぜ必要?非常用発電機メンテナンスを義務付ける3つの法律と罰則

非常用発電機の定期的なメンテナンスは、推奨されているだけでなく、法律によって厳格に義務付けられています。
これは、災害時に確実に機能させ、人命や財産を守るための重要な取り決めです。
主に「消防法」「建築基準法」「電気事業法」の3つの法律が関わっており、それぞれの観点から点検が求められます。

これらの法的義務を怠った場合、行政からの是正命令や、悪質なケースでは罰則が科される可能性があります。
例えば、消防法では最大で100万円の罰金が科されることも定められています。
担当者としての責任を果たすためにも、まずはこれらの法律について正しく理解しておくことが第一歩です。

法律名 主な目的 関連条文(例) 担当者として押さえるべきポイント
消防法 火災発生時に消防用設備(スプリンクラー、非常用照明など)へ電源を供給し、人命を守るため。 第17条の3の3 最も身近で重要な法律。定期的な点検と消防署への報告が義務付けられている。
建築基準法 特定建築物(多数の人が利用する施設)の安全性を確保するため。 第12条 設置されている建物の用途や規模によって、定期的な検査・報告が必要になる。
電気事業法 自家用電気工作物としての保安を確保し、感電や火災などの電気事故を防ぐため。 第42条 電気主任技術者による保安規程に基づいた維持・運用が求められる。

① 消防法:人命に関わる消防用設備の電源確保

3つの法律の中でも、特に重要なのが消防法です。
非常用発電機の多くは、火災時にスプリンクラー、屋内消火栓ポンプ、非常用照明、排煙設備などを動かすための「消防用設備」の電源として設置されています。
万が一、火災による停電時にこれらの設備が動かなければ、人命に関わる深刻な事態に陥りかねません。

そのため消防法では、建物の所有者や管理者に対し、消防用設備を定期的に点検し、その結果を消防長または消防署長へ報告することを義務付けています。
非常用発電機のメンテナンスは、この消防法に基づく重要な責務の一つなのです。

② 建築基準法・電気事業法:建物の安全と電気工作物の保安

消防法に加えて、建築基準法と電気事業法もメンテナンスの根拠となります。
多くの人が利用するデパートや病院、ホテルといった「特定建築物」では、建築基準法に基づき、建築設備である非常用発電機の定期的な検査と報告が義務付けられています。
これは、建物全体の安全性を維持するための措置です。

また、電気事業法では、非常用発電機は「自家用電気工作物」に分類されます。
設置者は電気主任技術者を選任し、保安規程を定めて適切に維持・運用する義務を負います。
このように、非常用発電機のメンテナンスは、防災、建築、電気という複数の観点から、その重要性が法的に裏付けられているのです。

【点検項目一覧】具体的に何をする?点検の種類・内容・頻度

法的義務を理解したところで、次に「具体的にどのような点検を行うのか」を見ていきましょう。
点検にはいくつかの種類があり、それぞれ実施する頻度や内容が定められています。
特に2018年6月の消防法改正では、東日本大震災の教訓から、より実践的な点検の重要性が示されました。
ここでは、主要な点検について解説します。

点検の種類 頻度 主な目的・内容
機器点検 6ヶ月ごと 発電機の外観や基本的な運転性能を確認し、異常の早期発見を目指す。
総合点検 1年ごと 機器点検の内容に加え、非常時に実負荷に近い状態で性能を発揮できるかを確認する。
負荷試験 原則1年ごと 模擬負荷装置などを用いて実際に負荷をかけ、発電機の運転能力を検証する。
内部観察 負荷試験の代替 ファイバースコープなどでエンジン内部の部品の劣化や損傷を確認する。
予防的保全策 部品ごとに周期を設定 負荷試験の実施周期を6年に延長するための、計画的な消耗部品の交換。

6ヶ月ごとの「機器点検」:基本状態のチェック

機器点検は、半年に一度実施される最も基本的な点検です。
人間でいえば、定期的な健康診断のようなもので、大きな不具合が発生する前に異常の芽を摘み取ることを目的とします。
専門業者による点検が基本ですが、担当者としてもどのような項目をチェックしているか把握しておくと、報告書の内容理解に役立ちます。

確認項目 チェック内容の例
設置環境・外観 発電機周りに障害物がないか、本体に損傷や腐食、オイルや冷却水の漏れがないかなどを目視で確認する。
運転性能確認 無負荷の状態でエンジンを始動させ、異音や異常な振動がないか、スムーズに運転・停止するかを確認する。
始動用蓄電池(バッテリー) 電圧や液量が規定値内にあるか、端子に腐食がないかなどを確認する。バッテリー上がりは始動不良の主原因の一つ。
計器類の確認 油圧計、水温計、燃料計などの計器が正常に機能し、適正な範囲を示しているかを確認する。

年1回の「総合点検」:負荷試験 or 内部観察

総合点検は、年に一度、機器点検の内容に加えて実施される、より詳細な点検です。
この点検の核心は、非常用発電機が「いざという時に、本当に役立つか」を検証することにあります。
そのための方法として、「負荷試験」または「内部観察」のいずれかを選択して実施します。

重要点検① 負荷試験:実稼働を想定した性能検証

負荷試験は、非常用発電機に専用の試験機を接続し、実際に電気的な負荷をかけて運転させる点検です。
災害による停電時、発電機は消防用設備などに電力を供給するために高い負荷がかかります。
無負荷での空ぶかしだけでは、この実稼働状態での性能を確認することはできません。

負荷をかけて運転することで、エンジン内部に溜まったカーボン(燃えかす)を燃焼・排出させ、エンジンのコンディションを整える効果もあります。
これを「ウェットスタッキング現象の解消」と呼び、エンジンの劣化を防ぐ上で非常に重要です。

測定項目 チェックポイント 許容基準(例)
電圧・電流・周波数 定格出力の30%以上の負荷をかけた状態で、電力の供給が安定しているか。 定格値に対し±5%以内など、メーカー指定の範囲内であること。
エンジン関連 冷却水温、潤滑油圧、回転数が規定値内で安定しているか。 メーカー指定の適正範囲内であること。
排煙の色 黒煙や白煙が出ていないか。正常に燃焼すると排煙は無色透明に近くなる。 運転開始時は黒煙が出やすいが、安定後は無色透明に近くなること。
異常の有無 異音、異常振動、オイルや冷却水の漏れ、異臭などがないか。 各項目で異常が認められないこと。

重要点検② 内部観察:エンジン内部の劣化を詳細診断

負荷試験の実施が騒音や排煙の問題で難しい場合などに、代替措置として認められているのが内部観察です。
これは、ファイバースコープ(工業用内視鏡)などを用いて、エンジンを分解せずに内部の状態を確認する点検方法です。
シリンダー内部の傷や摩耗、ピストンやバルブの状態などを直接観察できます。

また、潤滑油や冷却水を採取して専門機関で成分分析を行い、内部部品の摩耗の進行度や劣化具合を科学的に評価することも含まれます。
これにより、目に見えない部分の潜在的な故障リスクを特定することができます。

観察箇所 使用機材・手法 確認する内容
シリンダー内部 ファイバースコープ シリンダー壁面の傷、ピストン頭部のカーボン付着や損傷の有無。
過給器(ターボ) 目視、触診 タービン翼に欠損や変形がないか、軸にガタつきがないか。
冷却水・潤滑油 サンプル採取・成分分析 不凍液の濃度、金属成分の混入、酸化や劣化の度合い。
燃料噴射弁 ノズルテスター 燃料が正常な霧状に噴射されるか、圧力は適正か。

負荷試験を6年に延長できる「予防的保全策」とは?

2018年の消防法改正で導入された重要な選択肢が「予防的保全策」です。
これは、故障が発生する前に、メーカーが推奨する交換周期に基づき、計画的に消耗部品の交換や整備を行うことです。
この予防的保全策を毎年適切に実施していれば、原則年1回とされている負荷試験の実施周期を、最長6年に1回まで延長することが認められます [3]。

これにより、負荷試験に伴うコストや手間を軽減できる可能性があります。
ただし、どの部品をいつ交換すべきか、専門的な知識が必要になるため、信頼できる業者との連携が不可欠です。

交換部品(例) メーカー推奨交換周期(目安) 交換しない場合のリスク
潤滑油(エンジンオイル) 1年 潤滑不良によるエンジン焼き付き、性能低下。
冷却水(LLC) 1年 オーバーヒート、冷却系統の腐食。
燃料フィルター・潤滑油フィルター 1年 燃料供給不良による始動困難、エンジン内部の摩耗促進。
ファンベルト・ゴムホース類 5年 ベルト切れによる充電不良やオーバーヒート、ホースの亀裂による冷却水漏れ。

【料金表あり】非常用発電機メンテナンスの費用相場と内訳

メンテナンスの必要性や内容は理解できても、担当者として最も気になるのは費用ではないでしょうか。
費用は発電機の容量(kVA)や設置場所、点検内容によって大きく変動しますが、ここでは一般的な相場をご紹介します。
予算策定や業者からの見積もりを比較検討する際の参考にしてください。

項目 費用相場(目安) 備考
年間メンテナンス契約 10万円 ~ 60万円 機器点検、総合点検、軽微な調整などが含まれることが多い。発電機の容量が大きいほど高額になる傾向。
負荷試験(単発依頼) 15万円 ~ 50万円 20kVA以下の小型機で15万~20万円、200kVA以上の大型機では30万円以上が目安。
内部観察(単発依頼) 20万円 ~ 負荷試験よりも高額になる場合が多い。作業内容や分析項目による。
予防的保全策(部品交換) 都度見積もり 交換する部品代と作業費。潤滑油やフィルター交換で数万円~、ベルトやホース交換ではさらに高額になる。

【注意点】

  • 上記はあくまで目安であり、実際の費用は必ず業者からの見積もりで確認してください。
  • 潤滑油や冷却水などの廃油・廃液の処分費用が別途必要になる場合があります。
  • 見積もりを取る際は、作業内容の内訳が明確に記載されているかを確認することが重要です。

失敗しない!信頼できるメンテナンス業者の選び方5つのポイント

適切なメンテナンスを行うためには、信頼できる専門業者をパートナーとして選ぶことが何よりも重要です。
価格だけで選んでしまうと、必要な点検が適切に行われず、結局は「安物買いの銭失い」になりかねません。
ここでは、業者選びで失敗しないための5つのチェックポイントをご紹介します。

チェックポイント 確認すべき具体的内容 なぜ重要か
1. 有資格者の在籍 電気主任技術者、自家用発電設備専門技術者、消防設備士などの資格保有者がいるか。 法令に基づいた点検を正しく実施できる技術力と知識の証明になる。
2. 実績と専門性 同規模・同メーカーの発電機のメンテナンス実績が豊富か。ウェブサイトなどで事例を確認する。 発電機の構造は複雑。メーカーや機種ごとの特性を熟知していることが、的確な診断と整備につながる。
3. 見積もりの透明性 点検項目、部品代、作業費、諸経費などの内訳が詳細に記載されているか。不明瞭な項目がないか。 「一式」などの曖昧な見積もりは、後から追加費用を請求されるリスクがある。誠実な業者は説明も丁寧。
4. 緊急時対応力 突然の故障やトラブルの際に、迅速に対応してくれる体制があるか。連絡先や対応可能時間を確認する。 万が一の際に頼りになるかどうかが、事業継続の観点から非常に重要。
5. 提案力 現状の課題を指摘するだけでなく、予防的保全策の導入など、中長期的な視点での改善提案をしてくれるか。 単なる点検作業だけでなく、施設の状況に合わせた最適なメンテナンス計画を共に考えてくれるパートナーとなり得る。

複数の業者から見積もりを取り、これらのポイントを比較検討することで、自社の施設にとって最適なパートナーを見つけることができるはずです。

まとめ:計画的なメンテナンスで万一に備え、担当者の責任を果たす

非常用発電機のメンテナンスは、消防法をはじめとする法律で定められた、施設の管理者にとっての重要な責務です。
定期的な点検を怠れば、罰則のリスクがあるだけでなく、何よりも災害時に人々の安全や事業活動を守れないという、取り返しのつかない事態を招く可能性があります。

  • 法的義務を正しく理解し、定められた点検(機器点検・総合点検)を確実に実施する。
  • 負荷試験や予防的保全策など、発電機の状態に応じた適切なメンテナンス計画を立てる。
  • 費用だけでなく、実績や提案力なども含めて、信頼できる専門業者を選ぶ。

これらのポイントを押さえて計画的にメンテナンスを行うことが、非常用発電機の信頼性を維持し、担当者としての責任を果たすことにつながります。
この記事が、日々の設備管理業務の一助となれば幸いです。

お問い合わせ

株式会社東京エナジーカンパニー

【本社】
〒245-0009
神奈川県横浜市泉区新橋町249 越水B棟1-2
045-812-3616
FAX 045-812-3373

専門知識・技能保守者が責任持って業務に当たります

・消防設備士資格保有者
・第一種消防設備点検資格者
・自家用発電設備専門技術者