非常用発電機には、停電時に消火用のスプリンクラーを作動させるための電源を確保するという大切な役割があります。いざという時に発電機が正常に作動するように備えるために、消防法では定期的なメンテナンスに加えて負荷試験を行うことが義務付けられています。負荷試験では実際に非常用発電機を運転して、性能のチェックを行います。
もくじ
非常用発電機の運転試験が必要な理由
一定以上の規模の建物や病院などの医療機関に設置されている非常用発電機は、停電時に非常用の電源を確保するという大切な役割があります。病院であれば医療器具を作動させるために必要な電源を確保しなければなりませんし、商業施設などではエレベーターに人が閉じ込められるのを防ぐ役割を果たします。これらに加えて、非常用発電機は停電時に避難誘導用の照明を確保したり、消火用のスプリンクラー・消火栓ポンプや換気装置を稼働させるための電源を供給します。
消化用のスプリンクラーや消火栓ポンプを稼働させるためには、一定以上の出力を上回っていなければなりません。非常用出力が不足すると非常時に消火・排煙装置を稼働させることができないので、日頃から運転試験を実施しておくことが必要不可欠です。停電時でも消防設備が正常に稼働させるために備える目的で、非常用発電機の負荷試験は消防法により義務付けられています。
非常用発電機の運転試験には、無負荷(アイドリング)と一定の負荷をかけた状態で稼働させる負荷試験の2種類があります。消防法では無負荷だけでなく、負荷試験も求められています。
負荷試験を行う理由・意味
非常用発電機は内燃機関で、ディーゼルエンジンで発電機を回す方式が一般的です。ディーゼルエンジンを使用するので、日頃からメンテナンスをしておかなければいざという時に運転ができなくなってしまう恐れがあります。非常用発電機のディーゼルエンジンは定期的に運転して正常に稼働することを確認することが大切ですが、無負荷のアイドリング運転だけでは不十分です。非常時に実際に発電ができることを確認するためには、必ず一定の負荷をかけた状態で負荷試験を行って出力をチェックすることが大切です。
出力の確認以外にも、負荷試験を実施すべき理由が存在します。アイドリング運転を続けると、エンジンの内部に燃料に含まれるカーボンが堆積してしまいます。内部に堆積したカーボンはエンジン故障の原因になり、非常時に正常に運転ができなくなってしまう恐れがあります。負荷試験を実施することでエンジンの内部に堆積したカーボンを燃焼・排出することができるので、エンジンのメンテナンスにも役立ちます。
非常用発電機の負荷試験方法・手順
毎月の定期点検では無負荷状態で運転試験を行いますが、年に1回以上は負荷をかけた状態で運転を行います。消防法で規定されている非常用発電機の負荷試験の内容ですが、定格出力の30%かそれ以上の負荷をかけて一定時間にわたり運転をして出力や排気ガスをチェックします。
具体的な負荷試験の内容ですが、最初に無負荷の状態でエンジンを始動してから5%~20%程度の負荷を少しずつかけていきます。出力を見ながら、30%まで負荷をかけた状態で30分間以上運転させます。負荷をかけた際の電流・電圧測定を行って記録し、その間に排気ガスの色もチェックします。消防法では30%以上の負荷試験を実施することが義務付けられていますが、必要に応じて50%~70%の高い負荷をかけて運転を行います。
負荷をかけた状態でエンジンを運転すると内部に堆積した黒煙が排出されるので、最初は大量の黒煙が排出されます。一定時間にわたり試験を続けると黒煙が出てこなくなります。排気ガスの黒煙が止まらない場合には、運転を中止して内部の点検・整備を行う必要があります。
試験を実施したら、結果を記録して報告書を作成します。最後に試験を実施した際に消費した燃料・潤滑油・冷却水の補充をして完了です。
試験結果の記録・報告の方法
消防法で義務付けられている非常用発電機の負荷試験を実施したら、負荷試験時の出力や運転時間を記録して報告書(消防点検の自家発電機総合点検報告書)を作成して提出をしなければなりません。試験を実施したら「負荷運転」の項目の「運転状況」の欄に「○」印を記入し、試験時のデータ(運転時間や電流・電圧などの出力測定結果)を添付します。添付する測定データの内容ですが、一定の負荷(%)をかけて測定をした際の電流と電圧の数値を表にまとめます。5%・10%・20%・30%などのように、段階的に負荷を変化させてみて出力を測定した結果を記入しましょう。
これらに加えて報告書の下の方にある「測定機器」の欄に、機器の種別(型番・メーカー・出力など)を記入しなければなりません。ちなみに以前は点検報告書にお発電機の種別を記入することが義務付けられていませんでした。平成28年以降は消防法予第382号で、測定機器欄に非常用発電機のメーカーや型番を記入することが求められるようになったので注意が必要です。
まとめ
非常用発電機は月次点検の際にアイドリング状態で運転試験をしますが、年に1回は必ず30%以上の負荷をかけた状態で試験を行う必要があります。これは単に出力を確認するだけでなく、エンジン内部に堆積したカーボーンを燃焼排出させてエンジンのメンテナンスを行うためにも必要不可欠です。試験を実施したら、非常用発電機のメーカー・型番・出力なども報告書に含めるように注意しましょう。