宿泊施設の防火基準「適マーク」自家発電試験せず交付 福島の消防、8施設に

防火基準を満たしたことを示す全国統一の「適マーク」を受けた福島県内の旅館やホテルで、非常用自家発電設備を備える41施設のうち、少なくとも8施設が法定の発電設備の負荷試験をしないまま、マークを交付されていたことが15日、地元の各消防本部への取材で分かった。制度の趣旨を損ないかねず、審査した消防の対応が問われそうだ。

 適マークは収容30人以上、地上3階以上の宿泊施設が対象。建物の構造や防火管理態勢が法律にのっとっていれば、1~3年目は銀色、4年目以降は金色のマークを各地の消防本部が交付する。2012年に広島県福山市で7人が死亡したホテル火災を受け、14年に始まった。
 負荷試験の実施状況は、41施設が提出した適マークの申請書類を各消防本部を通じて確認した。中通りと会津地方の計8施設で、負荷試験の確認欄が無記入だったり、「無負荷」と記されたりしていた。
 担当した消防本部は取材に「試験は手間と費用がかかり、厳しく指導できなかった」と釈明。別の消防本部は「そこ(申請書類の詳しい記載内容)まで細かく審査していなかった」と弁明した。
 各消防本部は未実施の事実を認識していながら、適マークを取り消す措置は取っておらず、「早期の実施を求めている」などと説明した。
 負荷試験をせずに銀色の適マークを受けた中通りの旅館の担当者は「少なくとも自分が担当している6年間は試験をしたことはなかった。今年に入り消防から指導があり、11月中に実施する」と話した。
 消防庁予防課は「負荷試験未実施の施設の適マークをすぐに取り消すか、是正期間を設けるかは各消防本部の判断。未実施を放置してはおらず、判明し次第、適切な対応を取っていると考える」と説明した。
 不特定多数が利用する延べ床面積1000平方メートル超の旅館やホテルは、停電時に屋内消火栓やスプリンクラーを動かす非常電源として自家発電設備などの設置が不可欠。負荷試験を含む年1回の消防用設備の総合点検結果を消防署に報告する必要がある。

[自家発電設備の負荷試験]エンジンの回転数を上げ、発電能力の30%を目安に発電機を回す試験。異常な振動や発熱の有無を確認する。内部に残る燃料やすすを除く効果もある。試験方法に応じて建物を停電させたり、専用の装置を取り付けるなど手間や費用がかかる。2018年6月の法改正で、エンジン分解などによる内部状態の観察で代替できるようになった。

専門知識・技能保守者が責任持って業務に当たります

・消防設備士資格保有者
・第一種消防設備点検資格者
・自家用発電設備専門技術者